Q. 法人成りすると節税になると聞きました。法人にすると、どのような節税効果が期待できますか?
- 4 日前
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個人事業を続けていると、知人の経営者などから「法人にした方が節税になるよ」と言われることがあります。
中には、
「まだ法人にしていないの?」
「税理士さんから何も言われないの?」
と言われて、不安になる人もいるかもしれません。
確かに、法人成りによって税負担を抑えられるケースはあります。
ただし、「法人にすれば税金が安くなる」とだけ覚えてしまうのは少し危険です。
法人成りすると、税金の仕組みだけでなく、社会保険や会社のお金の扱い、事務負担まで変わります。
今回はまず、法人成りすると、なぜ節税の余地が生まれるのかを整理してみましょう。

経営者からの質問
個人事業から法人にすると節税になると聞きました。 「売上が増えたら法人化した方がいい」とも言われます。 具体的には、どんな節税効果があるのでしょうか? 注意点もあれば教えてください。
AI税理士の回答
結論から言うと、法人成りによって節税になるケースはあります。
ただし、最初に大事なことをお伝えします。
法人は「節税グッズ」ではありません。
法人化によって大きく変わるのは、「経費が増えること」ではありません。
事業で稼いだ利益と、社長個人の所得を分けて考えられるようになることです。
ここを理解すると、なぜ法人成りで節税の余地が生まれるのかが分かりやすくなります。
1.事業の利益を「会社」と「社長」に分けて考えられる
個人事業では、事業で出た利益は、原則として事業主本人の事業所得になります。
例えば、経費を差し引いた後に1,000万円の利益が出れば、その1,000万円を基礎として事業主本人の所得税などを計算していきます。
法人になると少し違います。
会社と社長は別の存在です。
会社から社長へ役員報酬を支払い、残った利益は会社の利益として残すことができます。
例えば、役員報酬を差し引く前の利益が1,000万円あり、社長へ600万円の役員報酬を支払えば、社長側では600万円を給与として受け取り、残った部分は会社側の利益として計算していくことになります。
実際には会社負担の社会保険料などもありますので、こんなに単純ではありません。
それでも、個人事業との大きな違いは分かります。
事業で稼いだ金額のすべてを、社長個人の所得にする必要がないのです。
所得税は、所得が増えるほど税率が高くなる累進課税です。
そのため、利益が大きくなってきた場合には、社長が役員報酬として受け取る金額と、会社に残す利益を考えることで、全体の税負担を調整できる場合があります。
ただし、会社に残した利益が無税になるわけではありません。
法人側にも税金はかかります。
また、会社に残っているお金は社長個人のお金ではありません。
自由に引き出して生活費に使えるわけでもありません。
法人成りのポイントは「会社に利益を残せば税金がなくなる」ことではなく、
会社に残すお金と個人で受け取るお金を分けて考えられることです。
2.役員報酬には給与所得控除がある
法人から社長へ支払う役員報酬は、社長個人では給与所得になります。
給与所得には「給与所得控除」という仕組みがあります。
例えば、年間600万円の給与であれば、現在の給与所得控除は164万円です。
そのため、600万円を受け取ったからといって、600万円全額がそのまま給与所得になるわけではありません。
これも、法人成りによって税負担を調整できる理由の一つです。
ただし、
「給与所得控除が使えるから、その分だけ法人の方が得」
という単純な話ではありません。
個人事業でも、一定の要件を満たす青色申告者には、最高65万円の青色申告特別控除があります。
また、役員報酬は会社の利益を見ながら毎月自由に増減できるものではありません。
一般的な中小法人の役員報酬では、「定期同額給与」など税務上のルールを満たさなければ、会社の損金として認められないことがあります。
3.「法人を赤字にすれば節税」ではない
ここは、とても大事なところです。
法人成りのメリットとして、
「会社と個人に所得を分けられる」
と説明されることがあります。
ところが、実際には法人税をできるだけ払いたくないという理由で、役員報酬を高く設定し、毎年会社をほとんど利益ゼロか赤字にしているケースがあります。
それでは、せっかく法人化したのに、会社と個人に所得を分けているとは言いにくくなります。
例えば、説明を単純にするため社会保険料などをいったん無視して、
役員報酬を差し引く前の利益が700万円の会社で、
役員報酬を1,000万円に設定した結果、
法人が300万円の赤字になった
としましょう。
法人側だけを見れば、
「赤字だから法人税がほとんどかからなかった。節税できた」
と思うかもしれません。
でも、社長個人は1,000万円の役員報酬を受け取っています。
その役員報酬を基礎として所得税・住民税が計算され、社会保険料の負担も生じます。
一方、個人事業のままであれば、そもそも事業所得は700万円だったかもしれません。
条件によっては、個人事業として700万円の所得に対して税金を払っていた方が、税金・社会保険料などを合わせた負担が小さかったということもあり得ます。
もちろん、給与所得控除や法人側の社会保険料負担、赤字の繰越しなどもありますので、この数字だけで有利不利を判断することはできません。
ここで理解してほしいのは、別のことです。

法人税をゼロにすることが、節税の成功ではありません。
会社を赤字にして法人税を減らす一方で、社長個人が高い所得税・住民税・社会保険料を負担していたら、全体として本当に得なのかを考える必要があります。
法人成りによって会社と個人に所得を分けるのであれば、会社にも一定の利益を残し、法人として純資産を積み上げていくという考え方も必要です。
4.働く家族への給与を設計しやすくなる
法人では、家族が実際に会社で仕事をしているのであれば、その仕事内容や勤務時間などに応じて給与を支払うことができます。
個人事業にも青色事業専従者給与という制度があります。
ただし、生計を一にする家族への給与を必要経費にするためには、「専らその事業に従事していること」など一定の要件があります。
法人では、家族の実際の働き方に応じて給与を設計しやすくなる場合があります。
もちろん、仕事をしていない家族へ節税目的だけで給与を支払うことはおすすめできません。
仕事内容、勤務時間、勤務実態、給与額などを第三者へ説明できるようにしておく必要があります。
また、家族へ給与を支払えば、その家族側の所得税・住民税や社会保険、扶養関係にも影響する場合があります。
家族に所得を分ければ、その分だけ必ず節税になるわけではありません。
5.将来、役員退職金という選択肢を持てる
法人では、将来社長が退任するときに、会社から役員退職金を支給することができます。
適正な役員退職金であれば、法人側では損金にできる場合があります。
一方、受け取る社長側では「退職所得」として課税されます。
退職所得には退職所得控除があり、原則として控除後の金額の2分の1を課税対象とする仕組みがあります。
そのため、会社に一定の資金を残しながら、将来の退職時まで含めて考える方法もあります。
ただし、退職金ならいくらでも経費にできるわけではありません。
また、役員としての勤続年数が5年以下の場合などには、2分の1課税が適用されないケースがあります。
退職金は、長期間会社を経営した結果として考える「出口」の一つです。
6.消費税の判定で有利になる場合がある
法人成りでよく聞くのが、
「法人を作れば消費税が2年間免税になる」
という話です。
新しく設立した法人は基準期間がないため、一定の要件を満たせば、設立1期目や2期目に消費税の納税義務が免除される場合があります。
ただし、現在はこの話を単純に信じない方がよいでしょう。
資本金の額、特定期間の売上高や給与等支払額、インボイス登録の有無、他の会社との関係などによって、設立当初から課税事業者になる場合があります。
特にインボイス登録をした法人は、基準期間がないことだけを理由として免税事業者のままでいることはできません。
ですから、
「法人成りすれば必ず消費税が2年間ゼロになる」
という理解は正確ではありません。
法人成りすると増える負担もある
ここまで読むと、
「それでも法人にした方が得なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、法人成りを考えるときには、節税効果だけでなく、増える負担も見なければなりません。
社会保険料
特に影響が大きいのが社会保険です。
法人は、社長一人だけの会社であっても、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所になります。
そのため、
税金は減ったけれど、社会保険料が増えて、結果として負担が大きくなった
ということは十分あり得ます。
税金だけを見て「法人の方が得」と判断してはいけません。社会保険料まで含めて考える必要があります。
赤字でもかかる法人住民税
法人には、赤字であっても原則として法人住民税の均等割がかかります。
例えば、東京都23区内だけに事務所を置く一般的な小規模法人では、資本金等1,000万円以下・従業者50人以下などの条件で、年7万円の均等割がかかります。
「赤字だから税金は何もない」というわけではありません。
税理士報酬や事務負担
法人になると、決算や税務申告も個人事業より複雑になります。
さらに、役員報酬の決定、給与計算、源泉所得税、年末調整、社会保険、各種届出、議事録、登記など、管理しなければならないことも増えます。
税理士や社会保険労務士などへ依頼すれば、その費用も必要になります。
法人は、節税のためだけに置いておける箱ではありません。
会社として運営するための維持費と管理責任が生まれます。
現役税理士からの補足
法人成りを考えるときは、所得税だけ、法人税だけを比較しても十分ではありません。
個人側・法人側の税金、社会保険料、税理士報酬なども含めて、全体としてどのような負担になるのかを見る必要があります。
ただし、事前のシミュレーションで「こちらが絶対に得」と明確に答えが出るとは限りません。
利益や役員報酬、家族への給与、今後の投資などによって結果は変わりますし、2~3年後には会社の利益そのものが大きく変わっていることも珍しくありません。
「利益が○○万円を超えたら法人」と一つの数字だけで機械的に判断するのは、私はおすすめしていません。
経営者に気付いてほしいこと
法人成りによって節税できるかどうかと、法人化した方がよいかどうかは、同じ質問ではありません。
法人になると、
会社と個人に所得を分けて考えられる
役員報酬として給与を受け取れる
家族の働き方に応じて給与を設計できる場合がある
将来の役員退職金という選択肢を持てる
消費税の判定で有利になる場合がある
といった違いがあります。
一方で、社会保険料、法人住民税、専門家報酬、事務負担などは増えます。
そして何より、
法人税を払わないことだけを目標にして、 会社を毎年赤字にしてしまえば、 せっかく会社と個人を分けた意味が薄れてしまいます。
法人成りの節税とは、法人税をゼロにすることではありません。
個人で受け取るお金と、 会社に残すお金をどう分けるのかを考え、 会社と個人を合わせて判断することです。
では、具体的に利益がいくらになったら法人成りを考えればよいのでしょうか。
「利益800万円くらいが法人化の目安」といった話もよく聞きます。
しかし、実際にはそんなに明確な境目があるわけではありません。
次の記事では、**「売上や利益がいくらになったら法人成りすべきなのか」**を、もう少し具体的に考えてみます。

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