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Q. 個人事業と法人、それぞれ何が良くて、何が大変なのでしょうか?

8月22日
読了時間: 10分

更新日:8月24日


個人事業と法人を比べるとき、税金や設立費用の違いばかりが注目されます。


もちろん、それも大切です。


でも実際に事業を続けていくことを考えると、私はそれ以上に大事なことがあると思っています。


会社と自分のお金をきちんと分けて管理できるか。


そして、


利益を自分で使うのではなく、会社に残して育てていく意思があるか。


この2つです。






経営者からの質問


個人事業で事業をするのと、法人で事業をするのでは、何が違うのでしょうか。 それぞれのいい面と、大変な面を教えてください。



AI税理士の回答


結論から言うと、小さく、身軽に、自由度高く始めたいのであれば、個人事業はとても使いやすい形です。


一方で、会社と個人を明確に分け、利益を会社に蓄積しながら事業を育てていきたいのであれば、法人が向いてきます。


ですから、

「法人の方が節税できそう」 「株式会社の方が信用されそう」 「社長になりたい」

という理由だけで法人を選ぶのはおすすめしません。


法人を作るということは、単に名前の後ろに「株式会社」が付くことではないからです。



個人事業の一番の良さは「身軽さ」



個人事業は、法人のような設立登記をしなくても始めることができます。


そのため、

  • まだ売上が読めない

  • お客さんがつくか試したい

  • 商品やサービスを変えながら試したい

  • できるだけ固定費を増やしたくない

  • 一人で小さく始めたい

という人には、とても相性がいいです。



まず個人事業で始めて、

「この商売なら続けられそうだ」 「ある程度利益が出るようになってきた」 「人を雇いたい」 「会社として大きくしていきたい」

となってから法人化する方法もあります。


最初から法人でなければいけないわけではありません。



個人事業は、お金の自由度も高い



もう一つ大きな違いがあります。


個人事業では、事業主と事業が別の人格になるわけではありません。


事業用口座から30万円を生活費として引き出しても、その30万円が経費になるわけではありませんが、法人のように「会社のお金を個人へ移した」という話でもありません。


もちろん、

通帳にあるお金=全部使っていいお金

ではありません。


これから支払う税金や消費税、仕入代金、借入金の返済などは残しておく必要があります。


それでも、税金などをきちんと見込んだうえであれば、個人事業は自分のお金として扱いやすい。


これは個人事業の大きなメリットです。



法人を作ると、「会社のお金」は自分のお金ではなくなる



法人では、ここが大きく変わります。


会社と社長は別です。


会社名義の銀行口座に入っているお金は、たとえ自分が100%株主で、自分一人だけの会社だったとしても、社長個人のお金ではありません。


たとえば、会社に1,000万円の利益が出たとします。

だからといって、

「今年は1,000万円儲かったから、800万円を自分の生活に使おう」

と自由に持って帰ることはできません。


役員報酬として受け取るのか。 配当として受け取るのか。 会社から借りるのか。


個人へお金を移すのであれば、それぞれにルールや税務上の取扱いがあります。


法人に利益を残すということは、自分が自由に使えるお金を増やすことではありません。 会社の財産を増やすことです。


ここは、法人を作る前にぜひ理解しておいてほしいところです。



法人を作るなら「会社に利益を残したいか」も考えてほしい



私は、法人を作るかどうかを考えるとき、

「この会社に利益を残して、純資産を積み上げていきたいと思っているか」

という視点がとても大事だと思っています。


会社が利益を出し、税金を払い、その利益が会社に残っていけば、利益剰余金が積み上がり、会社の純資産が厚くなっていきます。


もちろん、利益が出た金額と同じだけ現金が増えるわけではありません。


利益と現金は別の数字です。


それでも、利益を積み重ねて純資産を増やしていくことは、会社の財務基盤を作るうえで大切です。



ところが法人を作った後で、

「できるだけ税金を払いたくありません」 「利益を出したくありません」 「赤字の方がいいですよね?」

という話になってしまうことがあります。



節税そのものが悪いわけではありません。

必要な設備投資をした結果として赤字になることもありますし、事業には良い年も悪い年もあります。


でも、

税金を払いたくないから、毎年できるだけ利益をなくしたい

という考え方と、


利益を会社に残して、会社を強くしていきたい

という考え方は、基本的には逆方向です。



法人を作ったのに、利益が出るたびに何とか使い切ろうとするのであれば、

「そもそも法人という形が自分の考え方に合っているのだろうか?」

と一度考えてみてもいいと思います。


個人事業なら、儲かった年は儲かったなりに税金を払い、儲からなかった年はそれなりの負担になります。


そして、残ったお金は基本的には自分のお金です。


「会社を育てたい」のか、「自分が自由に使えるお金を増やしたい」のか。


これは法人を選ぶうえで、とても大きな違いです。



実は「きちんと管理できるか」も法人向きかどうかを左右する



もう一つ、制度の比較表にはなかなか出てこない大事なポイントがあります。


少し身も蓋もない言い方をすると、

きちんと管理するのが得意な人なのか、細かいことはなあなあで済ませたい人なのか。

これも法人を選ぶうえでは重要です。


法人になれば、

  • 会社のお金と自分のお金を分ける

  • 会社のカードと個人のカードを分ける

  • 何のためにお金を使ったのか記録を残す

  • 領収書や請求書を保管する

  • 給与や役員報酬をルールに沿って処理する

  • 税金や社会保険などの期限を守る

といったことを続けていかなければなりません。


「自分の会社なんだから、会社のお金も自分のお金でしょう」

という感覚では困ります。


法人は、作ることよりも、作った後にきちんと管理し続けることの方が大変です。


細かい管理が苦手だから法人にしてはいけない、という法律があるわけではありません。


でも、会社と個人のお金を分けるつもりがなく、今後もなあなあでやりたいのであれば、法人はかなり相性が悪いと思います。



法人には、管理以外の負担もある



もちろん、法人には制度上の負担もあります。


法人事業所は原則として健康保険・厚生年金の適用対象となり、代表者一人だけの会社も含まれます。


会社側にも社会保険料の負担が発生するため、法人化するときには資金繰りに織り込んでおく必要があります。


また、法人は赤字だから税金が完全にゼロになるわけでもありません。


法人住民税には、法人税額にかかわらず負担する均等割があります。


設立するときだけでなく、

持っているだけでも一定のコストと手間がかかる。

これが法人です。



法人だから信用される、というほど単純でもない



法人には、取引先との契約、採用、共同経営、出資、事業承継などで使いやすい面があります。


取引先によっては、法人であることを契約条件にしていることもあります。


ただし、

法人にしただけで信用力が急に上がるわけではありません。


銀行が融資を考えるときも、「株式会社だから大丈夫」という判断をするわけではありません。


売上、利益、自己資本、借入状況、事業内容、経営者など、会社の中身を見ます。


ですから、

「融資を受けたいから法人」 「信用されたいから法人」

だけで決めるのも少し違います。



ざっくり比較すると、こうです

項目

個人事業

法人

始めやすさ

始めやすい

設立登記などが必要

維持コスト

比較的軽い

固定費・手続きが増える

お金の自由度

比較的高い

会社のお金を個人的に自由に使えない

お金の管理

事業と生活が混ざりやすい

会社と個人を明確に分ける必要がある

利益の考え方

利益は事業主本人の所得

利益は法人に帰属する

利益の蓄積

税引後は本人の財産になる

利益剰余金として会社の純資産を積み上げられる

社会保険

事業主本人は原則、国保・国民年金など

法人事業所は原則として社会保険の適用対象

契約・組織化

業種・取引先によって制約がある場合も

法人格を使って組織化しやすい

撤退

比較的しやすい

解散・清算などが必要

管理の向き不向き

シンプルに運営したい人にも向く

お金・書類・期限をきちんと管理する必要がある

向いている人

小さく試したい・自由度を重視したい人

利益を会社に残し、事業を育てていきたい人




では、何を基準に決めればいいのでしょうか


個人事業か法人かを考えるなら、税率だけで決めないでください。


まず、次の2つを自分に聞いてみてほしいです。


①会社と自分のお金を、きちんと分けて管理できるか。


②稼いだ利益の一部を自分で使うのではなく、会社に残し、会社の純資産を増やしていきたいと思っているか。



そのうえで、

  • 法人でなければ契約できない取引先があるか

  • 人を雇う予定があるか

  • 共同経営者や出資者がいるか

  • 社会保険料などを負担しても資金繰りが回るか

  • 長く続ける事業として育てていく予定か

  • まだ事業そのものを試している段階なのか

といった条件を考えます。


そうすると、「個人事業か法人か」はかなり判断しやすくなります。



現役税理士からの補足


私は実際に、法人を設立した後も、会社の口座から5万円、10万円と自由に現金を引き出し、後から「このお金は何に使いましたか?」と聞いても分からなくなっている経営者によく出会います。


引き出した金額に見合う領収書が出てくればまだ確認できますが、たいていの場合は、それすら残っていません。何度お伝えしても、なかなか直らない経営者もいます。


まさに、個人事業のときと同じ感覚で、会社のお金を出し入れしているわけです。


会社のお金を個人的に使えば、役員への貸付や給与などとして税務上の問題になることもあります。


ですから、会社と自分のお金をきちんと分けて管理する自信がなく、「細かいことはなあなあでやりたい」というのであれば、私は無理に法人を作ることをおすすめしません。


法人にするかどうかは、税金だけではなく、自分が法人をきちんと管理できる人なのかも含めて考えてほしいと思います。



経営者に気付いてほしいこと


個人事業と法人は、どちらが上、どちらが下という関係ではありません。


個人事業には、

身軽さと、お金の自由度があります。


法人には、

会社と個人を分け、利益を会社に蓄積しながら事業を育てられるという特徴があります。


だから、

「法人にすると税金はいくら安くなる?」

だけで考えないでください。


それよりも、

「会社と自分をきちんと分けて管理できるか」


そして、

「稼いだ利益を会社に残して、会社そのものを強くしていきたいか」

を考えてみてください。


法人を設立するということは、「社長になること」ではありません。


自分とは別の会社という器を作り、その器の中に利益と財産を積み上げ、ルールを守って管理していくことです。


そこまでやりたいのであれば、法人はとても有効な仕組みです。

そこまで必要ないのであれば、個人事業という身軽な形も十分に優秀です。

自分の事業と、自分の性格に合った方を選べばいいんです。


法人を選ぶ場合、もう一つ考えておきたいのが、

**「誰が会社を管理するのか」**です。


法人になると、経理だけでなく、給与、社会保険、請求・入金管理、各種書類の管理など、一般的には個人事業より管理業務も増えていきます。


税理士に依頼したからといって、これらをすべて税理士が行うわけではありません。


経営者自身が行うのか、社内に担当者を置くのか、外部へ依頼するのか。


法人を選ぶなら、本業だけでなく「会社を管理する仕事」まで考える必要があります。


この点については、「個人事業を経験せず、いきなり法人設立で起業するのは甘いですか?」の記事で、もう少し詳しく取り上げます。



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