Q. 法人になると、社長自身が使える制度や選択肢はどう増えますか?
- 3 時間前
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「法人にすると節税できる」と聞くと、
「法人だけが使える特別な節税制度があるのかな?」
と思う人もいるかもしれません。
確かに、法人になることで、個人事業主だったときには自分自身へ使えなかった制度や、会社として設計できる選択肢が増えます。
例えば、役員報酬、社宅、出張旅費・日当、役員退職金などです。
ただし、ここでも順番を間違えないでください。
これらの制度を使うために法人を作る、という話ではありません。
事業を続けていく中で法人という器を選んだ。
その結果、
「会社として使える制度や選択肢が増えた」
と考える方が自然です。
そして、こうした制度は社長だけの節税策とは限りません。
社員にも利用でき、福利厚生や人事制度になるものもあります。
今回は、小さな会社でも現実的に利用できる制度を、税金だけではなく、社員へのメリットや会社の管理負担まで含めて考えてみましょう。

経営者からの質問
法人になると、 社宅や出張日当、退職金などが使えると聞きました。 小さな会社でも利用できるのでしょうか? 個人事業との違いや、注意点も教えてください。
AI税理士の回答
あります。
ただし、最初に一つ誤解を解いておきます。
社宅、出張旅費、従業員への退職金などは、 法人でなければ絶対に作れない制度ではありません。
個人事業でも、従業員のためにこうした制度を設けることはできます。
大きく違うのは、個人事業主本人です。
個人事業では、
事業主本人=事業をしている本人
です。
自分から自分へ給料を払うことはできません。
自分から自分へ出張日当を払うこともできません。
自分から自分へ退職金を払うこともできません。
法人になると、
会社と社長は別の存在
になります。
そのため、一定のルールのもとで、
会社 → 役員である社長
という関係を作ることができます。
ここが、個人事業主本人と法人社長の大きな違いです。
1.会社から役員報酬を受け取れる
まず基本になるのが役員報酬です。
個人事業主は、自分へ給料を払って経費にすることはできません。
法人では、会社から社長へ役員報酬を支払うことができます。
一定の要件を満たした役員報酬は法人側で損金となり、 社長個人では給与所得として扱われます。
そして給与所得には、給与所得控除があります。
これが、法人化によって税負担を調整できる理由の一つです。
ただし、これまでの記事でもお話ししたように、
「給与所得控除を使いたいから法人を作る」
という順番ではありません。
役員報酬を高くすれば、個人側の税金や社会保険料も増えます。
会社に利益が残らなくなることもあります。
役員報酬は、「いくら取れば一番節税できるか」だけではなく、
個人で必要なお金と、会社に残したい利益や資金
の両方を見ながら考えるものです。
2.会社として社宅制度を作れる
小さな会社でも比較的検討しやすいのが社宅です。
会社が住宅を所有したり借りたりして、それを役員や社員へ貸すことができます。
一定の本人負担を設定して適切に運用すれば、会社が負担する家賃のすべてが役員や社員への給与として課税されるわけではありません。
ここで知っておいてほしいのは、
社宅は社長だけの制度ではない
ということです。
社員にも社宅を貸与できます。
役員と社員では税務上の家賃負担額の計算方法が異なりますが、 どちらにも社宅制度があります。
つまり社宅は、
「社長の家賃を会社に払わせる節税策」
だけで考える制度ではありません。
社員にも借上社宅制度を用意すれば、
住居費の負担を軽くする
遠方から人を採用しやすくする
転勤に対応する
福利厚生を充実させる
といった使い方もできます。
人材採用や定着への効果の方が、税金のメリットより大きい会社だってあるでしょう。
一方で、会社側には契約管理、本人負担額の計算、入退去の手続きなどの仕事が増えます。
社宅は「社長の節税」ではなく、会社の福利厚生制度として考えると見え方が変わります。
3.出張旅費や日当を会社から支給できる
法人では、役員や社員が業務のために出張したとき、 交通費や宿泊費のほか、一定の日当を支給することがあります。
通常必要と認められる出張旅費や日当については、 受け取った役員・社員側で給与として課税されない取扱いがあります。
個人事業主でも、仕事で利用した新幹線代やホテル代などの実費は必要経費にできます。
違うのは、
個人事業主本人が、自分自身へ出張日当を支払うことはできない
という点です。
法人なら会社と役員が別なので、 会社から社長へ日当を支給する仕組みを作ることができます。
ただし、
「日当は非課税らしいから、とりあえず旅費規程を作ろう」
という考え方はおすすめできません。
日当には「○円までなら必ず非課税」という 一律の金額が決められているわけではありません。
会社の規模、役職、出張の内容、同業他社とのバランスなどを考えて、 通常必要と認められる水準で設定する必要があります。
参考までに、民間の出張旅費調査では、 国内出張の日当は一般社員で2,000円台程度というデータもあります。
ですから、
「日当1万円くらいなら大丈夫でしょう」
と安易に考えるのはおすすめできません。
そして私は、金額以上にもう一つ考えてほしいことがあります。
3,000円の日当のために、本当に制度を作りますか?
例えば日当を1回3,000円とします。
年間10回しか出張しない社長なら、受け取る日当は年間3万円です。
その3万円のために、
旅費規程を作る
出張の条件を決める
出張記録を残す
精算処理をする
規程どおり運用されているか確認する
という仕事が発生します。
会社によっては、
「そこまでやるなら、別に日当はいらないかな」
という判断だって十分あり得ます。
逆に、社員を含めて頻繁に出張する会社なら、 旅費規程を整備した方が経費精算そのものが分かりやすくなるでしょう。
つまり、
制度は「使えるから作る」のではなく、会社の実態に合うから作るものです。
4.会社から退職金を支給できる
法人を長く経営するのであれば、退職金も大きな選択肢です。
個人事業主は、自分自身に退職金を払って必要経費にすることはできません。
法人では、社長が実際に退任するときに会社から役員退職金を支給できます。
適正な金額であれば法人側で損金になり、 受け取る個人側でも、通常の給与とは異なる退職所得として扱われます。
そのため、
毎年利益をすべて役員報酬として受け取る
という方法だけではなく、
会社にも利益と資金を残し、長く経営した後に退職金として受け取る
という出口も考えられます。
ただし、ここでも、
「退職金規程を作れば節税できる」
とだけ考えないでください。
役員の退職金と社員の退職金は、同じ制度にしなければならないわけではありません。
一方、社員向けにも退職金制度を設けるのであれば、 それは社員にとって重要な労働条件になります。
誰を対象とするのか。
どのくらい勤務すれば支給するのか。
どうやって金額を計算するのか。
会社として将来その負担を続けられるのか。
そこまで考える必要があります。
つまり、
制度を作るということは、会社が将来のルールを決めることでもあります。
節税だけを見て作った制度が、将来会社にとって重い負担になる可能性もあります。
「節税制度」だと思っていたものは、実は会社制度かもしれない
ここまで、
役員報酬
社宅
出張旅費・日当
退職金
を見てきました。
ネットでは、
「法人化すると使える節税方法」
として紹介されることも多い制度です。
確かに、税務上有利になる場合があります。
でも、少し見方を変えてみましょう。
社宅は、社員の福利厚生にもなります。
旅費規程は、社員の経費精算ルールにもなります。
退職金制度は、社員に長く働いてもらうための制度にもなります。

つまり、
社長の節税制度だと思っていたものが、 実は会社全体の人事・福利厚生制度でもあるのです。
社員を雇う会社なら、ここは忘れないでほしいと思います。
制度には「3つのコスト」がある
制度を導入するときに、もう一つ覚えておいてほしい考え方があります。
見るべきものは、少なくとも3つあります。
1.税金はいくら変わるのか
これは多くの経営者が気にします。
でも、それだけではありません。
2.会社から実際にいくらお金が出るのか
社宅なら会社が家賃を払います。
退職金なら、将来まとまった現金を支払います。
節税になったとしても、会社からお金がなくなれば意味がありません。
そして、
3.その制度を管理するために、どれだけ仕事が増えるのか
ここは忘れられがちです。
旅費規程を作れば、出張の記録や精算が必要になります。
社宅制度を作れば、契約や本人負担額を管理します。
退職金制度を作れば、規程を維持し、将来の支給資金も考える必要があります。
経理や総務を担当する社員がいれば、その人の仕事が増えます。
社長自身が全部やっている会社なら、社長の仕事が増えます。
制度が増えるほど、経理・総務の仕事も増えます。
節税額だけではなく、
税金・現金・管理コスト
の3つを見て、本当に導入する意味があるのかを判断してください。
ネットから規程をダウンロードすれば終わり、 ではありません
旅費規程や退職金規程を検索すると、たくさんのテンプレートが見つかります。
参考にするのはよいと思います。
でも、
会社名だけ変えて保存すれば完成
ではありません。
例えば、
「片道100km以上を出張とする」
と規程に書いているのに、実際には近所への外出でも日当を支払っている。
規程では社員にも適用すると書いているのに、社長にしか支給していない。
決めたルールと実際の運用が違っている。
これでは、立派な規程があっても意味がありません。
規程は「節税するための紙」ではなく、会社が実際に守るルールです。
会社の実態に合った制度だけを作り、作ったならきちんと運用する。
それが一番大切です。
現役税理士からの補足
ここまでAI税理士の説明を読んで、私自身が率直に感じることがあります。
社員が数人から10人程度までの小さな会社であれば、私は、
「制度をいろいろ作るより、管理する手間の方が嫌だな」
と思いました。
もちろん、社宅が採用に必要な会社もあります。
出張が多ければ旅費規程を作った方が便利です。
退職金制度を設けることで社員に長く働いてもらえる会社もあるでしょう。
必要な制度なら、きちんと作ればいいと思います。
でも、節税になるという理由だけで制度を増やすのは、私はあまりおすすめしていません。
小さな会社なら、それよりも社員との食事会や懇親の機会など、実際に人間関係をよくすることへ会社のお金を使うのも一つの方法だと思います。
そして、社員が頑張って会社に成果をもたらしたのであれば、シンプルに賞与で還元する。
賞与なら税金や社会保険料はかかります。
節税という点だけを見れば、効率がいい方法ではないかもしれません。
でも社員から見れば、
「頑張った結果が、給料として自分に返ってきた」
と非常に分かりやすいですよね。
私は、小さな会社ではこういうシンプルさにも価値があると思っています。
小さな会社ほど、制度を増やすことより、社員が実際に喜ぶことへお金を使うという考え方もあってよいと思います。
もちろん、社員が20人、30人と増えてくれば事情は変わります。
人数が増えるほど、社長の感覚だけで会社を運営することは難しくなります。
社宅、旅費、退職金などについても、「今回はこの人だけ」という運用ではなく、会社としてルールを整備する意味が大きくなっていきます。
会社の規模に応じて、制度も成長させればよいと思います。
経営者に気付いてほしいこと
ここまで3本の記事で、法人成りと節税について考えてきました。
1本目では、
2本目では、
そして今回の記事では、
法人になることで社長自身も会社から制度の提供を受けられるようになり、会社として設計できる制度の幅も広がること。
を見てきました。
役員報酬、社宅、出張旅費・日当、退職金。
確かに税務上有利になることがあります。
でも、制度を作れば、
お金も出ます。
管理する仕事も増えます。
社員にも関係することがあります。
だから、
「節税できるから導入する」のではなく、「会社に必要な制度だから導入する。その結果、税務上も有利になる場合がある」と考えてください。
法人として事業を行うということは、単に税率が変わることではありません。
会社としてルールを作り、人を雇い、利益を残し、その制度を維持していくことでもあります。
法人は節税の箱ではなく、会社を運営するための器です。
この3本の記事を読んだうえで、それでも自分の事業に法人という器が必要だと思えるのであれば、そのとき法人成りを具体的に検討してみてください。
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