Q. 社長や営業担当は交際費を使うのに、その他の社員の経費だけ厳しいのはおかしくないですか?
- 3 時間前
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会社では、社長や一部の営業担当者が何万円もの会食をしている一方で、 社員の数千円の交通費や備品代には細かな確認が入る。
そんな光景を見ると、
「なんだか不公平じゃない?」
と思いますよね。
でも、この問題は単純に「社長対社員」で考えるだけではありません。
会社のお金を、誰が、何のために、どれくらい使うのか。
交際費には、その会社のお金に対する考え方がかなり表れます。

社員からの質問
社長や一部の営業担当者は会食も多く、 交際費をかなり使っているように見えます。 一方で、私たち社員が交通費や備品代などを申請すると、 「本当に必要だったのか」 「なぜこの金額なのか」とかなり細かく確認されます。 正直、モヤモヤします。 交際費なら自由に使ってよくて、 社員の経費はダメなのでしょうか?
AI税理士の回答
そのモヤモヤは理解できます。
ただ、最初に一つ分けて考えましょう。
社員の経費をきちんとチェックすること自体は、会社として間違っていません。
会社のお金を使う以上、
仕事に必要だったのか
金額は妥当なのか
領収書などの証拠はあるのか
を確認するのは必要なことです。
問題はそこではありません。
社員に説明を求めるのであれば、社長や交際費を使う営業担当者についても、「なぜ会社がこのお金を負担するのか」を説明できる状態になっているか。
ここが大切です。
交際費は「自由に使える営業予算」ではありません
交際費は、社長や営業担当者が自由に飲食するためのお金ではありません。
既存の取引先との関係維持、新規顧客との商談、協力会社との情報交換など、 事業上の目的があって会社が負担するものです。
もちろん、仕事は数字だけでは動きません。
食事をしながら話したことで仕事につながったり、 人間関係を築くことが重要な業種もあります。
ですから、 私は「交際費は無駄だから使わない方がいい」と言いたいわけではありません。
むしろ難しいのは、その逆です。
「交際費だから必要だろう」と、ほとんど検証されなくなることです。
「営業のため」 「付き合いだから」 「情報交換だから」 「人脈づくりだから」 「将来、仕事につながるかもしれないから」
交際費は、理由を付けようと思えばいくらでも付けられます。
だからこそ、経営者自身が冷静に見る必要があります。
税務上の「経費になる」と、会社として「使うべき」は別です
法人税では、交際費等は原則として損金不算入とされますが、 一定の中小法人については年800万円までの定額控除などの特例があります。
また、2024年4月1日以後に支出する一定の飲食費については、 1人当たり1万円以下で所定の事項を記録・保存するなどの要件を満たせば、 税務上の「交際費等」の範囲から除かれる制度があります。
ただし、ここで勘違いしてはいけません。
会社に100万円の余裕資金があるとして、
その100万円を会食に使うのか。
設備に使うのか。
広告に使うのか。
社員に還元するのか。
借入金の返済に備えて残しておくのか。
これは税務ではなく、経営者によるお金の配分の問題です。
実際、交際費はどれくらい使われているのでしょうか
ここで国税庁のデータを見てみましょう。
令和6年度分の会社標本調査では、法人の交際費等支出額は約4兆4,139億円でした。
業種別に営業収入10万円当たりの交際費等を見ると、
業種 | 売上10万円当たり |
建設業 | 732円 |
不動産業 | 619円 |
料理飲食旅館業 | 551円 |
サービス業 | 529円 |
出版印刷業 | 306円 |
小売業 | 180円 |
機械工業 | 163円 |
卸売業 | 153円 |
食料品製造業 | 145円 |
化学工業 | 134円 |
となっています。
業種によってかなり違います。
人と人との関係が受注につながりやすい業種と、 そうではない業種との差もあるでしょう。
ただ、「732円」「619円」と言われても、少し分かりにくいですよね。
そこで、 売上高5,000万円の会社だったらいくらになるのか、 単純に置き換えてみましょう。
売上5,000万円の会社に置き換えると、意外と少ない
先ほどの比率を売上高5,000万円に単純換算すると、こうなります。
業種 | 売上5,000万円に単純換算 |
建設業 | 約36万6,000円 |
不動産業 | 約31万円 |
料理飲食旅館業 | 約27万6,000円 |
サービス業 | 約26万5,000円 |
出版印刷業 | 約15万3,000円 |
小売業 | 約9万円 |
機械工業 | 約8万2,000円 |
卸売業 | 約7万7,000円 |
食料品製造業 | 約7万3,000円 |
化学工業 | 約6万7,000円 |
これは「この金額までなら使ってよい」という意味ではありません。
また、売上5,000万円の会社だけを取り出した平均額でもありません。
国税庁の業種全体の比率を、分かりやすく売上5,000万円に置き換えただけです。
それでも、意外に少ないと感じた方もいるのではないでしょうか。
たとえば建設業でも約37万円です。
売上1億円なら約73万円。
売上2,500万円なら、その半分の約18万円です。
「この業界は付き合いが多いから、交際費が多くて当たり前」
という感覚を持っていた方は、一度自社の数字と比べてみてもよいと思います。
資本金1,000万円以下の会社でも、売上比では約0.74%です
このサイトの読者に比較的近い、資本金1,000万円以下の法人だけを見ても興味深い数字が出ています。業種種別ではなく、資本金つまり会社の規模別のデータです。
国税庁の令和6年度分会社標本調査では、
交際費等支出額:約2兆7,049億円
1社当たり:約103万3,000円
営業収入10万円当たり:742円
となっています。
742円を割合に直すと、売上高の約0.74%です。
これを同じように換算すると、
売上2,500万円 → 約18万6,000円
売上5,000万円 → 約37万1,000円
売上1億円 → 約74万2,000円
です。
もちろん、これも「適正交際費」ではありません。
ただ、交際費を考える一つの物差しにはなります。
東京商工リサーチの調査でも、売上高の中央値は0.61%
もう一つ、東京商工リサーチのデータも見てみましょう。
7期連続で交際費を確認できた10万592社について調べたところ、 2025年の交際費は1社平均343万円でした。
金額だけを見るとかなり多く感じます。
ところが、売上高に対する交際費比率の中央値を見ると、2025年は0.61%です。
2019年の0.69%から、むしろ低くなっています。
営業利益に対する比率も、2019年の8.1%から2025年には4.1%まで低下しています。
東京商工リサーチも、 企業が交際費の必要性や営業戦略上の優先順位を見極める姿勢が 強まっている可能性を指摘しています。
国税庁と東京商工リサーチでは、調査対象も集計方法も違います。
ですから、0.74%と0.61%を単純に比較することはできません。
それでも、どちらも売上高の1%を下回る水準になっています。
売上の1%を超えているなら、一度は中身を確認してみませんか
ここまでの数字を見ると、一つの目安は作れそうです。
私は、
交際費が年間売上高の1%を超えている会社は、一度その中身を確認してみてもよい
と思います。
「1%を超えたら使いすぎ」という意味ではありません。
あくまで、要点検のラインです。
売上5,000万円なら、
1% → 50万円
2% → 100万円
4% → 200万円
6% → 300万円
です。
国税庁の資本金1,000万円以下の法人の比率を単純換算すると約37万円ですから、売上5,000万円で交際費300万円なら、その水準の約8倍になります。
8倍だから悪い、という話ではありません。
本当に必要なら、使えばよいのです。
重要なのは、
「なぜこれだけ多いのか」 「そのお金によって会社は何を得ているのか」 「現在の利益や資金繰りに見合っているのか」
を経営者が説明できるかどうかです。
もし、ほかの経費が平均の10倍だったらどうしますか?
少し違う角度から考えてみましょう。
もし、自社の電気代が同じ規模の会社の10倍だったら、どうしますか。
通信費が10倍だったら。
消耗品費が10倍だったら。
車両費が10倍だったら。
おそらく多くの経営者は、
「なぜこんなに多いの?」
と原因を調べると思います。
担当者が使っている経費なら、
「本当に必要なの?」 「もっと減らせないの?」
と厳しく確認するかもしれません。
場合によっては、「経費管理が甘い」と注意することもあるでしょう。
では、交際費が同じ規模の会社と比べて5倍、10倍だったらどうでしょうか。
なぜか交際費になると、
「営業だから」 「付き合いだから」 「この業界では必要だから」
という言葉で、確認が終わってしまうことがあります。
ほかの経費なら平均の何倍も使っていると分かれば原因を調べるのに、 なぜ交際費だけは調べなくてよいのでしょうか。
これは、一度考えてみてもよいと思います。
交際費の「費用対効果」を見ていますか?
広告費なら、
「100万円使って何件問い合わせがあったのか」
を気にしますよね。
採用費なら、
「いくら使って何人採用できたのか」
を確認します。
ところが交際費になると、
「今年200万円使いました」
で終わってしまうことがあります。
本来なら、
誰との関係づくりに使ったのか
どの取引を維持するためだったのか
新しい仕事につながったのか
同じ相手に毎年同じ金額を使う必要があるのか
金額や回数を減らしても関係は維持できないのか
くらいは、ときどき振り返ってもよいでしょう。
もちろん、交際費の効果を広告費のように、
「10万円使って30万円売れた」
と正確に測ることはできません。
長期的な人間関係もあります。
何年かたってから仕事につながることもあります。
だから、すべて数字で評価しろという話ではありません。
ただ、何も振り返らないことと、年に一度でも振り返ることはまったく違います。
交際費は、一度増えると減らしにくい経費でもあります
交際費には、もう一つ厄介なところがあります。
付き合う人が増える。
会食する店の単価が上がる。
ゴルフや会食の回数も増える。
それ自体が直ちに悪いわけではありません。
問題は、その後です。
業績が悪くなったからといって、一度上がった交際費の水準を簡単に戻せるでしょうか。
付き合いがあります。
見栄もあります。
「以前はこの店だったのに」
と思われたくない気持ちもあるでしょう。
その結果、
利益は減った。
現金も減った。
社員には経費削減を求めた。
それでも交際費だけはあまり変わらない。
そんなことが起こります。
交際費は、経営者自身が使うことも多いからこそ、 自分では削りにくい経費になりやすいのです。
社員は「金額」だけでなく「順番」を見ています
社員の立場から考えてみましょう。
会社から、
「今年は厳しいから昇給は難しい」 「賞与は少し抑えます」 「備品はできるだけ節約してください」
と言われている。
その一方で、社長や一部の営業担当者の会食やゴルフは以前とほとんど変わらない。
社員からすれば、
「まず、そこは見直したの?」
と思っても不思議ではありません。
社員が見ているのは、交際費の金額だけではありません。会社が苦しいときに、誰に、どの順番で我慢を求めているかです。
社員の数千円の経費を細かく管理すること自体は悪くありません。
むしろ必要です。
だからこそ、社長や一部の営業担当者が使う数万円、数十万円についても、
「営業だから」
という理由だけで聖域にしない方がよいと思います。
交際費は、相手を見る材料にもなります
ここまで自社の交際費について考えてきましたが、もう一つ使い道があります。
取引先や経営者を見る一つの材料にすることです。
経営者同士で付き合っていると、
「この人は会食が多いな」 「ゴルフによく行っているな」 「かなりお金を使っているな」
と感じることがあります。
もちろん、それだけで会社の経営状態を判断してはいけません。
本当に大きな利益を出していて、十分な現金を持っている会社かもしれません。
ただ、相手のお金の使い方を見ることで、
「この会社は何にお金を使う会社なのだろう」 「この経営者は、お金についてどんな考え方をする人なのだろう」
と考えるきっかけにはなります。
経営者同士の付き合いは、ただ楽しく飲んで終わるだけではなく、人や会社を見る機会にもできます。
会食の場で何を話しているのか。
どんなことにお金を使うのか。
社員や取引先についてどんな話をするのか。
そうした何気ないところにも、経営者の考え方は表れます。
一つの印象だけで相手を決めつける必要はありません。
でも、お金の使い方も、その人や会社を知るための一つの情報として見る。
そんな視点を持っておくのも、経営者には役立つと思います。
現役税理士からの補足
今回、国税庁の数字を改めて見ると、交際費は私が実務で普段目にしている金額より、かなり少ないという印象を受けました。
実際、私が関与する会社の中には、今回紹介した水準の数倍、場合によっては10倍近い交際費を使っている会社もあります。
だからこそ感じるのですが、交際費について費用対効果を意識し、定期的にチェックしている経営者は、それほど多くないように思います。
もちろん、業種や営業方法によって必要な交際費は違います。
ただ、「昔からこうしている」「この業界では付き合いが必要だから」という理由だけで毎年同じように使うのではなく、ときどき立ち止まって数字を見ることは必要ではないでしょうか。
交際費は、会社を成長させることもあります。
一方で、気付かないうちに資金繰りを圧迫する経費にもなります。
その両方があり得るからこそ、私は厄介な経費だと思っています。
経営者に気付いてほしいこと
交際費は悪い経費ではありません。
会社を伸ばすための有効な投資になることもあります。
ですから問題は、
交際費を使ったか、使わなかったか
ではありません。
なぜ使ったのか。 そして、今の会社の売上、利益、現金に見合った使い方なのか。
そこです。
国税庁の資本金1,000万円以下の法人では、交際費等は売上高に対して約0.74%。
東京商工リサーチの調査でも、売上高に対する交際費比率の中央値は0.61%でした。
少なくとも、
自社の交際費が売上高の1%を超えているのであれば、一度中身を確認してみる。
私は、そのくらいの使い方をしてもよい数字だと思います。
1%を超えているから悪いのではありません。
2%でも5%でも、それ以上の成果を生んでいるなら合理的な経営判断かもしれません。
大切なのは、
「うちはこの業界だから仕方がない」
で終わらせないことです。
「この交際費は、本当に会社のために使っているお金なのか。そして、この金額を使い続けることが会社にとって最善なのか」
一度、決算書を開いて考えてみてください。
社員に数千円の経費について説明を求めるのであれば、 社長や営業担当者が使う数万円、数十万円についても、同じように考えてみる。
会社のお金の使い方には、経営者の考え方が表れます。
そして、その姿を社員は思っている以上によく見ています。


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