Q. 事業を始めたばかりでお金がありません。自分で記帳や決算をしても大丈夫ですか?
- 2 時間前
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起業したばかりの頃は、できるだけお金を使いたくないですよね。
「まだ売上も少ないし、税理士さんに頼むとお金がかかる。会計ソフトもあるから、最初は自分でやってみよう」
そう考える人は少なくありません。
自分で記帳すること自体は、私は悪いことだと思いません。
むしろ、自分の事業の数字を理解するという意味では、 一度自分で会計に触れてみることには大きな意味があります。
ただし、一つ知っておいてほしいことがあります。
会計ソフトへ入力することと、正しい帳簿を作ることは同じではありません。
そして、自分でやってみると分かりますが、 経理や決算は思っているほど簡単ではありません。

経営者からの質問
まだ事業を始めたばかりです。 お金もないので、自分で記帳業務や決算業務を行おうと思っています。 税理士さんに頼むとお金もかかりますし、最初は売上も少ないので、自分で会計ソフトに入力して、決算や申告までやってみようかなと思っています。 何か問題はありますでしょうか?
AI税理士の回答
結論から言います。
自分で記帳すること自体は、悪くありません。
事業を始めたばかりの頃なら、取引数もそれほど多くないことがあります。
自分で帳簿をつけながら、
「今月はいくら売れたのか」 「何にお金を使っているのか」 「利益はいくら出ているのか」 「手元にはいくら残っているのか」
を見る習慣をつける。
これは経営者にとって、とても大切なことです。
ただし、
「自分で記帳する」と「自分で正しく決算・申告までできる」は、まったく別の話です。
ここは一緒にしない方がいいでしょう。
取引がシンプルなら、自分で記帳することはできる
たとえば、
売上先が少ない
経費の種類も少ない
現金取引が少ない
在庫がない
従業員がいない
借入金がない
事業用とプライベートのお金を分けている
といった状態なら、自分で日々の記帳をすることは十分可能です。
むしろ起業初期だからこそ、自分のお金の動きを一つずつ確認してみるのもよいでしょう。
問題は、その先です。
会計ソフトに入力できることと、会計ができることは違う
今の会計ソフトは、とても便利です。
銀行口座やクレジットカードを連携すれば取引を取り込んでくれますし、 AIが勘定科目を推測してくれる機能もあります。
そのため、初めて使った人でも、
「意外と簡単じゃないか」
と感じるかもしれません。
ただ、会計ソフトはあくまで道具です。
入力や集計は助けてくれますが、 すべての取引について正しい会計判断をしてくれるわけではありません。
たとえば、
売上をいつ計上するのか
クレジットカードで買った経費をいつ計上するのか
売掛金や未払金をどう扱うのか
借入金の返済をどう処理するのか
高額なパソコンや設備をどう処理するのか
個人的な支出が混ざった場合にどうするのか
決算期をまたぐ支払いや入金をどう考えるのか
といったことは、自分で判断しなければならない場面があります。
会計には、単に「これは通信費」「これは消耗品費」と勘定科目を選ぶだけではなく、 いつ売上や経費として認識するのかという考え方もあります。
よく出てくるのが「発生主義」です。
難しい言葉ですが、簡単にいえば、 お金が入った日・出た日だけで売上や経費を判断するわけではないということです。
こうした基本的な考え方を知らなければ、 会計ソフトを操作できても正しい帳簿になっているとは限りません。
「入力操作ができる」と「会計処理ができる」は同じではありません。
難しい取引より前に、普通の帳簿が合わないこともある
「難しい税務の話さえなければ、自分でもできる」
と思うかもしれません。
ところが、実際にはもっと基本的なところで帳簿がずれることがあります。
たとえば、
帳簿上の現金残高がマイナスになっている
逆に、帳簿には何百万円もの現金が残っている
会計ソフトの普通預金残高と、実際の通帳残高が合っていない
クレジットカードの支払いを二重に計上している
売上の入金をそのまま売上として処理した結果、売掛金が合わない
個人的な支払いと事業の支払いが混ざっている
といった状態です。
本人としては、
「全部入力しました」
という認識でも、帳簿を見ると数字が合っていないことがあります。
これは珍しい話ではありません。
入力が終わっていることと、帳簿が完成していることは違うのです。
自分でやるなら、簿記3級程度を一つの目安に
法律上、「自分で記帳するなら簿記3級が必要」という決まりがあるわけではありません。
ただ、私は、自分で経理をするのであれば、 簿記3級程度の内容は一度勉強しておくことをおすすめします。
たとえば、
売上と入金は違う
経費と支払いは違う
利益と預金残高は違う
借入金の返済はすべて経費になるわけではない
売掛金や買掛金とは何か
資産と負債とは何か
損益計算書と貸借対照表は何を見るものなのか
このあたりを知っているだけでも、会計ソフトに表示される数字の見え方は変わってきます。
会計ソフトは経理を楽にしてくれる道具です。
でも、会計の基礎を知らなくても正しい決算書を作ってくれる魔法の道具ではありません。
個人事業で、取引が少なく、内容もシンプルであれば、自分で記帳から確定申告まで対応できる人もいます。
一方、法人になると、一般的には難易度が上がります。
法人税等の申告が必要になりますし、 事業の状況によっては消費税、源泉所得税、役員報酬などの論点も出てきます。
「売上が少ない会社だから簡単」
とは限りません。
会社の規模が小さくても、法人である以上必要になる会計処理や手続きがあります。
ですから、会計や税務をほとんど勉強したことがない状態から、法人の決算・申告まですべて独学で行うことについては、私はあまりおすすめしません。
自分でやるなら「片手間」ではなく、きちんと時間を使う
ここは大切なところです。
税理士に頼まないのであれば、その分、自分で勉強する必要があります。
分からないことを調べる。簿記を勉強する。会計ソフトの使い方を覚える。自分で作った帳簿が正しいか確認する。
当然、時間がかかります。
ですから、
「税理士に払うお金がもったいないから、空いた時間に適当に入力しておこう」
くらいに考えるのはおすすめできません。
自分で経理をするのであれば、それなりの時間と労力をかける仕事だと考えてください。
その時間をかけるつもりがないのであれば、専門家へ任せるという選択肢も考えた方がいいでしょう。
自分でやるなら、最初にお金の流れをシンプルにしておく
もう一つ、起業したばかりの人にはぜひやってほしいことがあります。
事業のお金と、プライベートのお金を分けることです。
たとえば、
事業用の銀行口座を作る
事業用のクレジットカードを作る
売上の入金先をできるだけ事業用口座へまとめる
事業の支払いをできるだけ事業用口座・カードへ集約する
個人的な支払いをなるべく混ぜない
これだけでも、経理はかなり分かりやすくなります。
反対に、事業用口座、個人口座、複数のクレジットカード、現金、QRコード決済などに取引がバラバラに散らばってしまうと、後から整理するだけでも大変です。
起業したばかりだからこそ、最初にお金の通り道を作っておく。
事業用の銀行口座やクレジットカードをどう使えばよいのかについては、
別の記事で詳しく取り上げたいと思います。
現役税理士からの補足
起業前後の相談では、 「税理士報酬を抑えたいので、自分で経理をしたい」という話をよく聞きます。
実際に自分で記帳している方もいます。
ただ、私がこれまで帳簿を見てきた感覚では、 ご本人が思っているほど正確にできているケースは多くないというのが印象です。
私自身も以前は、 「会計入力くらいなら、誰でもそれなりにできるのでは」と思っていました。
ところが実際に帳簿を確認してみると、そう簡単ではありませんでした。
現金残高がマイナスになっている。 帳簿上の現金だけがどんどん増えている。 普通預金の残高が通帳と合っていない。 単純な取引でも仕訳が違っている。
難しい税務判断以前に、 帳簿そのものをきちんと作るところでつまずいているケースが意外と多いというのが、 私の実感です。
だから私は、 会計や経理を片手間で簡単にできる仕事だとは考えないでほしいと思っています。
一方で、自分で勉強することには賛成です。
むしろ私は、経営者には会社の数字を読めるようになってほしいと思っています。
せっかく起業するのであれば、簿記を勉強する。
帳簿を自分で作ってみる。 分からない処理を調べる。 必要であれば税理士に質問する。
そのために時間やお金を使うことは、 長い経営者人生を考えれば価値のある投資だと思います。
そして、ここで少し考え方を変えてみてください。
税理士報酬を節約するために会計を勉強するのではなく、 自分の会社の数字を理解するために勉強する。
私は、この考え方の方が大切だと思っています。
自分で帳簿を作れるようになったからといって、 税理士を使わなくてもよいとは限りません。
自分で数字を見たうえで、
「この処理でいいですか?」 「この数字はどう見ればいいですか?」 「こういう場合は、どう考えますか?」
と相談する。
税理士を単に帳簿や申告書を作ってもらう人ではなく、 会計や税務について壁打ちをする相手、 あるいは経営者が数字を見る力を身につけるためのコーチのような存在として 利用する考え方もあります。
もちろん、そのような対応をどこまで行うかは税理士によって違いますし、 相談や指導に時間をかけてもらえば、その分の報酬が必要になる場合もあります。
ですから、
「自分で経理をする=税理士報酬を安くできる」
とは限りません。
でも、それでいいのだと思います。
自分で勉強しながら専門家も利用して、自分で判断できる範囲を少しずつ増やしていく。
そのために会計を学ぶのであれば、 経営者にとって非常に意味のある勉強になると思います。
経営者に気付いてほしいこと
「自分で経理をするか、税理士に頼むか」
これを単純な二択で考える必要はありません。
自分で帳簿をつけながら税理士に確認してもいいですし、 記帳は任せても、自分で試算表を読めるように勉強してもいいでしょう。
大切なのは、 税理士へ任せることと、自分の会社の数字まで丸投げすることを同じにしないことです。
起業したばかりでお金がないなら、自分で記帳するという選択肢もあります。
ただし、自分でやるならきちんと学ぶ。
分からないところは確認する。
そして、会社の数字を自分でも理解できるようになる。
会計を勉強する目的は、税理士報酬を数万円減らすことだけではありません。
これから何年、何十年と事業を続けていく経営者として、 自分の会社の数字を理解する力を身につけることです。
そのために使う時間やお金なら決して無駄ではないと思います。


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